2009年9月12日土曜日

小谷浩士(こたに ひろし) 個展

小谷浩士の大個展を今週19日(土)まで好評開催中です!


小谷氏がGallery Kozukaで展覧会を始めて
30年近くなります。
初期から完成度の高さには定評があります。

平面作品をもって、人が関わる空間を表現することに努めてきました。
空間とは、たとえば現在、過去、未来の時間が内在する空間、
意識と無意識が行き交う空間、
そして現実、非現実を体感する此処にある空間を指しています。

今回の個展では、上記のことに加えて
「楽しい記憶」が盛り込まれています。
単一的な色の画面のなかに、何かの輪郭や断片が見て取れます。
それをみると、子供の頃のなにか懐かしいことが思い出され、
少し切なくなるけれど自然と笑顔になる、
そんな楽しい気分にしれくれます。

また本展では、今までとは違ったことに挑戦しました。
まず、全ての作品がアクリル絵の具で描かれています。
そして個々にタイトルが付けられています。

はじめに、制作技法について。
作品は見た目やコンセプトで判断されることが多いですが、
制作技法を知ると内容がよりわかりやすくなったり、
作品ができあがる過程を想像することができて身近に感じられます。
美術作品をみる楽しさがより広がると思います。

今回の作品は全作新作新シリーズとなっています。
アクリル絵の具を画面にベタに塗ることは
小谷氏の作家人生において初めての試みです。

”不遊具 I” キャンバス、アクリル絵の具、130.5x 97.2x2.5 (cm)、2009年

今までの制作技法は、主に木炭を指に付け、
その指で擦ることによって濃淡を表していました。

”無題” キャンバス、木炭、116.7x80.4 (cm)、2003年

同じように、パステルの粉を指に付け、
指の跡を残すように紙に押しあてながら描いていく技法もあります。

”漂域” 紙、パステル、114.5x213 (cm)、1997年
撮影者:長谷川治憲

他には、パステルを削った粉とアクリル絵の具のメディウムを混ぜ、
それを筆にのせて色とりどりの細かな点をキャンバスにうっていく方法もありました。

”領域” キャンバス、アクリル絵の具、パステル、41.2x32 (cm)、1997年
撮影者:長谷川治憲



新シリーズでは、筆を使ってアクリル絵の具を塗っています。
もちろん5回塗りをしないと
ここまでマットな表面にはなりません。
ちなみに、色と色の境界線、一筆書きのような線は
すべてフリーハンドで描いています。


”眠りを支える II” キャンバス、アクリル絵の具、91.2x91.2x2.5 (cm)、2009年


タイトルは全ての作品に付けられています。
漢字三文字のものが多く、
作家曰く、演歌のタイトルみたいだそうです。。。。
ちなみに、小谷氏が一番気に入っているタイトルは
”顔シリーズ”の「水平天使」です。
会場で探してみてくださいね。


”顔シリーズ:夜に浸る” キャンバス、アクリル絵の具、33.4x24.3x2 (cm)、2009年

この一筆書きにも今回の作品にとって必然的な意味があります。
作品の受け手である皆さんにいろいろなことを感じ、思い、考えていただくことで
作品が作品として存在する意義を見いだすことができます。
画廊へ展覧会をみに行くということは、作品や作家を身近に感じ、
自分のすきなものに出会い、それを所有することができる
特別な機会だと思います。
現代に生きている作家たちが今後の日本の芸術文化を作り上げています。
しかしそれを応援するということも重要で、
その文化を方向付け、形を整えていくのだと思います。