加藤謙司展を開催しております。
加藤謙司氏は三重県四日市市出身で、
愛知教育大学大学院を修了しています。
その後、東海地区や東京でのグループ展へ精力的に参加、
賞も多数受けられています。
2001年から当ギャラリーにて二年に一度のペースで
個展を開催しています。
初期より樟 (くすのき)を使用した彫刻作品を制作しており、
主にインスタレーション形式で展示しています。
2003年 Gallery Kozukaでの個展風景
今年の夏に友人が佐世保の方へ皆既日食を見物に行きました。
その折に片島というところへも寄ったそうで、写真をブログで見せてくれました。
海と島が写っていて「良さそうなところだなー」と思っていたら、
その中の一枚の写真に「片島魚雷発射試験場跡」という看板が一緒に載っていました。
つまりは人間魚雷を発射するために操縦の練習をしていたところ、ですよね?
夏には戦争特集や映画がテレビで放送されていて、そのなかで
人間魚雷となった兵士たちのドラマがありました。
それを見て奥深い衝撃を感じていた矢先にその試験場跡の写真を見ました。
どちらに関しても現実感が増して、言いようのない気持ちになりました。
"沈黙するかたち Ⅲ"、2009年(現在展示)
今回の加藤謙司氏の作品を見ると、なにかの乗り物の操縦席が見て取れます。
メーターの位置や数からすると車ではなく、飛行機かなと思わせます。
それにしてはコクピットが小さすぎるかな。。。などと考えていると、
だんだんと人間魚雷の操縦席のイメージが重なっていきました。
丁度一人だけが座ることができ、操縦に関するものはぐるりと体の周りにあって。。。
そして作品自体が白で塗られています。
清廉潔白を表す白色は死装束やその意も込められているという
白無垢に使われています。
白で塗られた乗り物をイメージさせるその作品は、
誇りと希望をもって突撃した人間魚雷の生まれ変わった威厳ある姿に見えます。
部分 - "沈黙するかたち Ⅲ"、樟に着色、50x120x50 (cm)、2009年
作品をみるということは、作り手とは違う見る側の個人の感情や経験によって
理解することです。作品をちらっと見たときの「好き、嫌い」という判断も
見る人それぞれのバックグラウンドによる最初の価値判断です。
ですので、美術作品を見るときは、まったく自由に感じれば良いのです。
それがたとえば作家の意図と異なっていても、
そのような見方もあるということなので、作品の幅が広がったととれるわけです。
周りがなんと言っていても、自分自身で作品と心の対話をすることが重要だと思います。
美術館へ行くことも楽しいですが、
画廊にて、同時代を生きている作家たちの作品を見ることも
誰にも価値判断を強制されない自由があって
より楽しめると思います。
是非、お一人で、そして皆さんでお出かけください。
年内のGallery Kozukaの営業は、今週の土曜日、26日までとなります。
翌日27日から2010年1月8日 (金)まで冬休みをいただきます。
宜しくお願い申し上げます。